活動報告

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KNIT a Network!ロールモデル座談会(ゲスト:北海道大学 高等教育推進機構 CoSTEP 特任助教 朴炫貞(パク ヒョンジョン)さん)を開催しました(12/3)

『KNIT a Network!ロールモデル座談会』は、科学や研究の世界に関わる様々なゲストを迎え、インタビュー方式によりゲストの人生、仕事内容などを語っていただく企画です。
12/3(木)に開催された第11回目は、北海道大学 高等教育推進機構 CoSTEP 特任助教 朴炫貞(パク ヒョンジョン)さんに「アーティストが北大で働く、ということ」というタイトルでお話を伺いました。
 
先生は韓国の大学で芸術を学ばれたのち日本に来日し、日本の大学で博士課程(造形)を修められ、本学CoSTEPの特任助教に就任されました。日本の文化や映画が好きで、時代・ジャンルによって表現方法が全く違うことに「日本って何?!」とご興味を持たれたことが来日のきっかけだったそうです。
 
視聴者のみなさんからは「アーティストで研究者という立場を確保するために、資金調達・人脈作りなど、どのような努力や工夫をされていますか?」「日々のお仕事の中でやりがいを感じることや、将来のビジョンは?」などたくさんの質問をいただきました。
 
朴先生にはたくさんのエピソードやその時考えてきたことを通して、励ましのお言葉をいただき、誠にありがとうございました。学内のみならず北見工業大学や室蘭工業大学より20名以上のお申し込み、ご参加をいただきました。誠にありがとうございました。
この続きは下記「レポート」をご覧ください。
 
次回のKNIT a Network!研究者交流会は2021年1月に開催する予定です。近日Webサイトでご案内いたしますので、皆様のご参加をお待ちしております!

 

レポート

11/30~12/4に開催された異分野meetup week 2020期間中の開催として、meetup week SPECIAL!!と題してお送りしました。座談会をお届けしたのもスペシャルな場所で、学内札幌研究林内にある「アノオンシツ」こと1973年に建てられた温室。「アノオンシツ」は、朴先生のプロジェクト名でもあります。
当時の建築様式や古くから研究のフィールドとして使用されていた温室に一目惚れをして、この場所でアートプロジェクトをされている朴先生。美しい植物に囲まれての配信でした。
 
お話のスタートは、朴先生が学生時代に作成した映像作品“他人のまなざしを語る”のお話から始まりました。
この作品を創るきっかけは、2001年9月11日以降、私たちの日常で目にするようになった生々しいテロや戦争の映像に対して朴先生が抱いた “メディアから流れる映像で、当事者の気持ちが体験・理解できるのだろうか?”という疑問だったとのこと。そこでまず他の人にも聞いてみるべくインタビューを開始し、最終的に、他の作家による戦争を置き換えて表現している作品、メディアで流れるような戦争の映像、インタビューで語られる“声”や身振り手振りがわかる“影”を一つの空間に表現をした作品が完成しました。
この作品は、ソウル国際女性映画祭に招待出展することになり、自分で発信するというのはこういうことなんだ!という驚きや感動の体験になったとのこと。この作品は遠くアフリカでも上映されることとなり、異なる国で作られた作品が別の国で違う解釈をされることに魅力を感じるきっかけとなったそうです。
 
表現する世界でも活躍されている朴先生ですが、朴先生のお母さまも芸術家(陶芸)として活躍されていることから、自分もものを創りたい、そして創った人やものをリスペクトすることが身についていた、と自身が芸術を志したルーツについてお話くださいました。
しかし、朴先生が大学の専攻として“芸術”を選択された時、お母さまは賛成されるのかと思いきや、“反対”されたそう。その理由は、芸術の世界の厳しさを知っているから。このような進路選択の応酬を経て、朴先生は芸術の中でも“映像”を学ぶ学科へ進学することとなりました。映像を学んでいれば、放送局など一般企業で働くという選択肢が見え、ご家族も安心、ということだったそうです。
 
ところが大学4年を終える朴先生は就職せず、さらに自身の表現を極めるために大学院の進学を考えました。
ご自身でも将来の選択肢は、いくつかある中で選ぶというわけではなく、何となくはっきりと見えてきた一つのものを選んでこられたそうです。大学卒業後の進路選択でも、知らない世界を見てみたい!という気持ちを軸に進学を志し、進学先を探す中で、知りたい!見てみたい!ことがここなら叶う!!!と感じたのが日本の大学院(研究室)だったから、日本の大学院に入学する、という選択肢がはっきり見えたそうです。
 
こぼれ話:朴先生は、日本の古典映画や1970年代の日本のロック、そして日本のバラエティ番組に触れるなかで日本の映像表現の幅広さは“なんなんだろう!!”と興味を持ったとお話されていました。
朴先生は、日本に来てから言葉もわからないし大変だったと語りながらも、新しい視点で韓国語をとらえることができ、韓国語の形や音の繋がりを物語にして発表したり、ご自身の文化・背景・価値観の元になるようなものも発見できた、と振り返ってお話されました。
 
たくさんのエピソードを伺うなかで駆け足で進んだ質問タイムでしたが、3つの質問にお答えいただきました。
 
参加者からの「アーティストで研究者という立場を確保するために、どのような努力や工夫をされていますか?資金調達・人脈作り・成果報告など、、、」という質問には、作品を創る実技で学位を取得された朴先生ですが、自分が創った作品や場について語れるような人になりたいと考え、論文も書けて研究もできて、作品も作ることを目指したとのこと。人脈は、作品活動の中でアーティストを紹介していただくことが多く、自然と拡がっていく。一方で、大学で働いていることで日頃アートの世界で働いていない方と知り合えることがあり、これが朴先生の武器になっていくと、独自のコミュニティを拡げられていることもお話いただきました。その中で、「曖昧な人」「ちょっとヘンな人」という現在のアイデンティティが気に入っていて、これを維持することを意識していて、そこから見えてくる視点で問を投げることは作品のメッセージにもなっている、とお話されていました。
 
「日々のお仕事の中でやりがいを感じることや、将来のビジョンは?」という質問には、教育の面でのやりがいとして、現代アートの実技や世界を教えることは大変だけど、アートという世界の入り口を提示して、それで人生が変わったとか、自分の人生の中に美術というレイヤーができたという話を聞くと実感する、とお話いただきました。
作品制作では、自分がやったことより新しい、面白いものを自分で創れたという実感があったり、周囲からコメントもらうとやりがいを感じる、ということでした。
 
「総合大学内で数少ないアーティストとして所属することは悩むこともあったと思いますが、ご自身の中で受け入れられた、ここにいて良かった、思えるようになった瞬間は?」という質問には、まだ首になってなくてよかった(笑)!と冗談を交えながら、ここにいる意義は北大でしかできない実践ができ、作品を創れることは魅力、とのこと。ローカルを強く発信するということは、私がここに、今(この時期)いたことを発信すること自体が実践・実績になって次につながると、ご自身の考えをお話しいただきました。“受け入れてくれている”ということはどう定義するか難しいが、評価軸ということでは作品を実績として評価の中で認められるように変わってきていること、デザインの相談を受けるようにもなったこと、アートを意識するような流れになってきているように感じているエピソードを紹介いただきました。その中からやりがいや今後の課題も見つかるとお話されていました。
 
これでロールモデル座談会はいったん終了し、引き続き研究者コミュニケーションサロンのお時間になるまで、朴先生と聞き手を務めるRee-D藤井のフリートークが始まりました。その中でも参加者の方から質問をいただいたりと、お昼時間のゆったりとした雰囲気の中お話は続き、ご参加いただいたほとんどの方から、研究者コミュニケーションサロンもご視聴いただきました。朴先生、参加者の皆様、誠にありがとうございました。
 
研究者コミュニケーションサロンの開催報告は、こちらからご覧ください。