Column

メインビジュアル画像 メインビジュアル画像

キャリアとリプロダクティブ・ヘルス/ライツ両立支援コラム➂

第3回 男性にも知っておいてほしい、性ホルモンの知識

キャリアとリプロダクティブ・ヘルス/ライツについて、
CAFEえびに集うメンバーと一緒に考えていきたいと思います。

えび先生 : CAFE EBIのマスター。
      産婦人科医からキャリアチェンジして念願の喫茶店を開業。
      “ワイフ”と呼ぶパートナーのかにさんやお客さんとの会話が楽しみ。
かにさん :CAFE EBIのキッチンリーダー。
      もともとは食とは全く関係ない分野の研究者だったが、
      美味しいごはんの提供をしたくてえびせんせいとキャリアチェンジ。
まっちゃん:CAFE EBIの常連客。仕事はラボで研究員。しょうくんがパートナー。
      最近、同級生のライフイベントの報告が多い。
      ライフ・キャリアプランを意識している。
しょうくん:CAFE EBIの常連客。仕事はラボで研究員。まっちゃんがパートナー。
      えびせんせいからリプロダクティブ・ヘルス/ライツという考え方を知り
      勉強中。

※登場人物は全て架空の人物です。
 

Take home message

  • ホルモンの分泌が変化すれば体調も変化する。
    体調が変化すればホルモンの分泌も変化する。
  • ホルモンバランスが変わる時は生活スタイルが変わる時。
  • 自分の体を知ってつきあっていこう。
  • TOPIC

  • 性ホルモンと心身の関係-ホルモンバランスと自律神経-
  • 1. 月経周期と性ホルモン
    2. 閉経へ向かう身体と性ホルモン
    3. ホルモンバランスの変化-心身が不調になるとき-

  • 自分の体を大切に、メンテナンスする。
  •  

    えび先生、この間月経について色々お話してくれたけど、なんでストレスや急激な体重変化が月経に影響があったり、月経周期の中で気分が変わったりするの?

    それはね、性ホルモンが関係していることもあるんだよ。

    最初にお話してくれた、女性ホルモンや男性ホルモン?

    そう。性ホルモンは、前に話したエストロゲンとテストステロンだけじゃなくて、もっと種類があって、それらが連携することで生殖機能が保たれているんだ。そしたら今日は、性ホルモンと身体の関係についてお話していこうか。

    性ホルモンと心身の関係-ホルモンバランスと自律神経-


    1. 月経周期と性ホルモン

    月経周期は目安として28日と言われているけれど、それは人それぞれ。
    月経周期は、視床下部-下垂体前葉-卵巣系の複雑な相互作用で調節されているんだよ。視床下部からゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)が分泌され、下垂体前葉を刺激してゴナドトロピンであるLHとFSHを分泌する。これらのゴナドトロピンが卵巣を刺激して、性腺ステロイドホルモンであるエストロゲンやプロゲステロンの分泌を促している。ホルモンは下垂体前葉や視床下部にフィードバック作用があり、これらで調節がおこっているんだ。

    ちょっと詳しくみると(図1参照) 、FSHは月経開始以前に上昇しはじめLHも増えはじめる。これによって卵胞の発育が促され、エストロゲン産生が増加する。排卵直前のエストロゲン分泌の急激な上昇によって、LHサージ(急上昇)がひきおこされて排卵が起こるんだ。卵を放出した卵胞は黄体に変わり、黄体ホルモンつまりプロゲステロンが産生される。
    プロゲステロンの中枢作用によって体温が上昇する。基礎体温はこの変化を捉えているんだよ。つまり、排卵後に体温が上昇して次回月経時に下降するんじゃ。


    2. 閉経へ向かう身体と性ホルモン

    閉経前後には、今まで分泌されていた女性ホルモンが減っていくんだ。
    月経の停止である閉経は、50~51歳を中心として起こるんじゃ。加齢による卵胞の喪失がその原因だが、生涯の卵子数のはなしは、後日また話そうね。40歳代では卵胞数は減少して、エストロゲンの産生が減っていき閉経にいたるのだよ。エストロゲンの低い状態は閉経以降、続くのだけどホルモン変化があり過渡期ともいえる更年期に、日常生活に支障をきたす症状、つまり更年期障害がおきやすいんだね。更年期障害は、ほてり感(hot flash)や冷えなどの自律神経症状、不眠や抑うつなどの精神症状といった多彩な症状がでるんだよ。
    この症状には、女性としての喪失感や将来への不安といった心理的・性格の要因、家族や仕事などの社会的・環境要因もからんでいるんだ。だから、症状の個人差も大きいんだ。月経と同じように、更年期も我慢しないで自分がつらいと感じたら、産婦人科に相談していいんだよ。対応してくれるから。

    3. ホルモンバランスの変化-心身が不調になるとき-

    月経周期の中の変化はもちろんだが、もう少し大きくとらえると、ライフサイクルの中で女性ホルモン分泌が変化するときに、女性の心身は不調になりやすいんだよ。閉経前後に更年期障害がおこることは知ってるよね。出産後にも急激な女性ホルモン減少が起こっていて、育児などの環境変化とあいまってメンタルに不調をきたすひと が少なくないんだ。それ以外でも、生活環境や体重の変化などでストレスが身体にかかると、月経不順に繋がりやすい。

    年齢によるホルモンの影響は、男性にはないの?

    男性も、男性更年期と呼ばれる症状が出ることもあるみたい。もし日常生活に支障がある場合は泌尿器科が専門になるよ。

    なんで女性は体のイベントがこんなにも多いのかって思うこともあるけど、私たちはヒトっていう生き物ってこと忘れてた。でもヒトは今えびさんから教えてもらっているように、仕組みを知って自分の希望と相談しながら生きることができるんだね。

    そう。ホルモンバランスをはじめとした体のことを知って理解することは、リプロダクティブ・ヘルスにおいて大切なことなんだ。知っていれば、他者の身体や希望の多様さを感じることができるかもしれないからね。

    自分の体を大切に、メンテナンスする。
    -自分の心身を知ってWell-beingに保つことはみんなのWell-beingへ-

    女性は生物学的に体調に影響がでる機能を男性より持っているってことは事実なんだよね。そして性ホルモンの分泌が変化する、つまり体調に影響がでやすい時期は、大切な仕事を任されてプレッシャーを感じる時期と重なることもある。私の場合は、“なんで私ばっかりこんな目に!!”とか思っていたけれど、実は感じ方に程度はあるけど“自分だけ”ではないんだよね。同性はもちろん、男性だって体調がいつも良好ってことでもないし、あらゆるプレッシャーにさらされているものね。

    ホルモンバランスの変化による気持ちのゆらぎや体調不良は、どうしようもないから過ぎ去ることを待つのもひとつだね。体調でも気持ちでも、「辛い」、と思った時は産婦人科を頼っていい。それぞれのライフサイクルにベストの対応がうけられるよ。

    そうそう。過ぎ去るのを待っても大丈夫か、いつもと違うのか、自分で考えることもあるし、自分の体調や健康について話せる友達には、お互いの健康についておしゃべりすることもあるよ。今の自分の健康を客観的に捉えることができたり、自分以外の話を聞いて、そういうこともあるんだって初めて知ることもあるし、私だけではないんだって安心することもある。自分の健康の秘訣が誰かの健康秘訣役立つ感じね。

    でも体調のことを気軽に話すことができる友だちって少ないなぁ。

    プライベートなことだもの、それはそれで当たり前。[1]北海道大学札幌キャンパスの保健センターでは、女子学生相談を設けています。
    厚生労働省の研究班が作成したセルフチェックができるサイトは医療機関の検索もできるよ。[2]女性の健康推進室 ヘルスケアラボ(厚生労働省研究班(東京大学医学部藤井班)監修)
    自分の心身を知ってWell-beingに保つことは、みんなのWell-beingにも繋がるんじゃないかなぁ。

    (監修:北海道大学大学院 保健科学研究院 教授 蝦名 康彦)

    脚注

    脚注
    1 北海道大学札幌キャンパスの保健センターでは、女子学生相談を設けています。
    2 女性の健康推進室 ヘルスケアラボ(厚生労働省研究班(東京大学医学部藤井班)監修)