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- 石塚 真由美先生
- 北海道大学理事・副学長
獣医学研究院教授
多様な背景が混ざり合い、
お互いの良さを引き出し合える
柔軟な組織こそが、真の強さを生む
LILAS
Leaders for people with Innovation,
Liberty and AmbitionS.
フロントランナーとして活躍している女性リーダー(Leader)を紹介する女性研究者インタビューシリーズLILAS。リラはフランス語で札幌の花としても知られるライラック(Lilac)を意味します。 インタビューの内容から着想を得た植物のアレンジメントとともに、植物の持つ力強さやしなやかさ、多様性などのメッセージを媒介させながら、オリジナルインタビューシリーズとして発信していきます。
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第10回は獣医学研究院の石塚真由美さん。 石塚さんは毒性学の研究者として、ザンビアでの環境汚染研究など国際的かつ学際的なプロジェクトを牽引してきました。獣医学部で初めての女性教授であり、現在は大学の理事・副学長として大学運営の重責も担っています。「やりたいことを実現するために、上位職を目指してほしい」と語る石塚さんに、教室運営のポリシーや異分野連携の醍醐味、そして次世代へのメッセージを伺いました。
自立性を育むことが教育の根幹
先生が研究室のマネジメントに関わるようになったのは
いつ頃からでしょうか
私が北海道大学に助教として着任したのは2000年です。
当時は「助手」という呼称でしたが、そこから研究者としてのキャリアが始まりました。いわゆる教室全体をマネジメントする「教授」という職に就いたのは2010年からになります。
職位が変わるにつれて、
マネジメントにはどのような変化がありましたか
それぞれの段階で、求められる役割や目線の高さが異なると感じています。助教時代は、学生に最も近いポジションとして、彼らと同じ目線で一緒に実験をし、動くことを重視していました。准教授になると、少し俯瞰的な視点から自分たちの教室の運営や、組織としての在り方を考える必要が出てきます。そして教授になると、視座をさらに高めなければなりません。
自分たちの教室のことだけでなく、その教室が大学の中で、あるいは社会の中でどのような役割を果たし、どのようなポジションにあるべきかという、より広い目線での運営が求められるようになりました。
研究室を運営するうえで、
最も大切にされているポリシーを教えてください
助教の頃から一貫して変えていないマイルールがあります。それは、学生の研究テーマについては教員が決めるのではなく、まず学生自身に提案してもらうということです。教員が進めている大きな研究プロジェクトの一部を切り取って学生に割り振る方が、効率よく論文を出し成果を上げるには手っ取り早いかもしれません。しかし、私は学生を単なる研究の「歯車」にはしたくないのです。
学生自身がやりたいことを選ぶ、ということですね。
具体的にはどのような進め方をされているのですか
毎年、学生が研究室に入るときに何がやりたいのかを聞くことから始めます。たとえその提案が、日本国内ではサンプリングが難しい生物の研究であっても、学生に強い意志があれば、海外の研究室にコンタクトを取るなどして、実現できる体制を整えます。自分のやりたいことを自分で計画し、推進していく。この「自律性」を育むことこそが、教育の根幹だと信じています。現在私たちの研究室には多くの留学生も在籍していますが、国籍に関わらず博士課程の学生は自らリサーチプロポーザルを立案するなど、主体的に研究を動かしていく文化が根付いています。
他学部の先生方とチームを結成したことで研究が劇的にアクティブに
石塚先生といえば、ザンビアでの環境汚染研究をはじめとする学際的な研究が印象的です。
異分野との連携に踏み出したきっかけは何だったのでしょうか
実は、学生からの問いがきっかけでした。私たちは毒性学の専門家として、ザンビアの環境汚染を調査し「ここが汚染されています」「この動物は食べないほうがいいです」といった指摘をしてきました。しかし、現地の方々から「では、どうすればいいのか?」と問われたとき、獣医学の知識だけでは具体的な解決策を提示できなかったのです。その時、学生から「僕たちがやっている研究には意味があるんでしょうか」と投げかけられました。そこで、自分たちに答えがないなら他の分野の専門家の力を借りてみようと思ったのです。
そこから工学や経済学など、全く異なる分野への「越境」が始まったのですね
准教授の頃までは、自分のテリトリーから「半歩」踏み出す程度の共同研究が主でしたが、教授になってからは完全にテリトリーから飛び出すようになりました。面識のない工学部の先生にいきなり連絡を取り「こういうことをしたいのですが相談に乗ってもらえませんか」と、とにかくコンタクトをしていきました。北大は幸いなことに総合大学です。
他学部の先生方とチームを結成したことで、自分たちの専門外の視点から颯爽と解決策が提示され、研究が劇的にアクティブになりました。この「越境」の面白さを知ると、研究室全体の壁も低くなります。今では学生たちもためらいなく外のネットワークを活用し、異なる分野へ実験方法を習いに行くような、オープンな研究環境が実現しています。
自然体のダイバーシティと、
先人の重みある言葉
獣医学部で初めての女性教授として、
苦労されたことはありましたか
意外に思われるかもしれませんが、キャリアを重ねる上で、女性であることで摩擦が起きたり、壁を感じたりした記憶はほとんどないのです。むしろ、前の教授が退職された時にいただいた「教授になったら、色々な会議に呼ばれて忙しくなるぞ。でも、頼まれたら断るなよ」という言葉が、今の私を支えています。実際、この予告通り学内の様々な委員会や理事といった重責が舞い込みましたが、私はその教えを忠実に守り、与えられた役割を受け止めてきました。受け止めてきたことで、開けた道もあると感じています。
ダイバーシティについては、どのようにお考えですか
単なる数値目標としての「形だけのダイバーシティ」に陥ってはいけない、という危機感を持っています。性別だけでなく、留学生や異なる背景を持つ人々が、お互いにリスペクトし合える「生態系」のような環境こそが理想です。
私たちの研究室も、女性が多い時期もあれば、男性ばかり、あるいは留学生が多数を占める時期もあります。そうした多様な背景が混ざり合い、お互いの良さを引き出し合える柔軟な組織こそが、真の強さを生むと考えています。
「エクセレンス」と「エクステンション」の
融合を目指して
研究者として、また大学運営に携わる立場として、
今後のビジョンをお聞かせください
現在、北大は「エクセレンス(卓越した研究)」と「エクステンション(社会貢献)」を二つの柱としていますが、私の研究はその中間でありたいと思っています。
卓越した研究を追求しつつ、それをしっかりと社会に還元していく。その象徴的な取り組みが、2025年4月から設置された「法獣医学(動物版の法医学)」の寄付講座です。動物の不審死の死因を究明し、警察と協力して事件解決のエビデンスを示す。これは、鋭く尖ったサイエンスでありながら、社会の正義を守るという直接的な貢献に繋がっています。
こうした「欲張った目標」をこれからも追い求めていきたいと考えています。
大学運営については、どのような大学を目指していきたいですか
究極的には「学生が来たくなるような大学」です。そのためには、先生方が自分の夢を追いかけ、キラキラと楽しんで研究できている環境が不可欠です。大学は本来、個々の先生が自分の夢を最大化できる場所であるべきだと考えています。
先生がのびのびと活動していれば、学生も自然とその姿を追いかけてくるはずです。
ビジョンを具現化できることは、
何物にも代えがたい楽しさ
これから上位職を目指す若手研究者へのメッセージをお願いします
上位職になると、確かに責任や付随する仕事は増えます。しかし、それ以上に自分のやりたいことを実現できる範囲が格段に広がります。
私自身、准教授の頃は「教授になるのは大変そうだ」と消極的な時期もありました。しかし、実際にその立場になってみると、自分の責任で理想のラボを築き、ビジョンを具現化できることに気が付きました。自分の力で実現していくことに何物にも代えがたい楽しさを感じています。もし実現したい未来があるのなら、恐れずに挑戦してほしいです。「やりたいことのためなら、なんでもやる」という覚悟があれば、道は必ず開けます。その先には、その人にしか見ることのできない、素晴らしい景色が広がっているはずです。
LILAS
Library
「子どもの頃、夢中になって読んだ本です。動物や昆虫の行動の不思議に心惹かれ、それを丹念に観察し、謎を解き明かしていくシートンやファーブルの姿に憧れました。振り返れば、今の研究につながる私の原点だったと思います。」
LILAS
Plants
毒にも薬にもなる植物たち。華岡青洲はじめ、数々の探求から今にいたる。石塚さんが大人になってからいいなと思えた花が集まったピンクのハイドランジア。
アジサイという名は
あぢ →「集まる」、さゐ → 「真藍(さゐ)」=濃い藍色。
という説も。
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イガナス(チョウセンアサガオ)
学名:Datura metel 科名・属名:ナス科チョウセンアサガオ属
- 毒性が強い。日本に入ったころは薬効があるものとしてきた。
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ハイドランジア
学名:Hydrangea 科名・属名:アジサイ科アジサイ属
- 毒性があるものもある。薬効もありマラリアの治療薬としても。
LILASは北海道大学創基150周年事業です。北海道大学は2026年に創基150周年を迎えます。