本部長あいさつ
北海道大学は、令和3年12月に、多様性と包摂の観点から、未来社会に向けて大学が進むべき方向性と大学の決意を示すために「ダイバーシティ&インクルージョン推進宣言」を公表しました。この理念に沿って、無意識の差別や偏見を乗り越えたバイアスフリーキャンパスの実現に向けて取り組むため、令和4年4月に、新組織『ダイバーシティ・インクルージョン推進本部(以下、DEI推進本部、英語表記:Office of Diversity, Equity and Inclusion)』を設置しました。
DEI推進本部では、かねてより重点的に取り組んできた「女性研究者が様々なライフステージにおいても将来展望をもって活躍できる環境の整備」「女性研究者の育成・支援に係る取組」等ジェンダー平等の視点に加え、これまで包摂が不十分であったマイノリティ属性をもつ構成員がその能力を十分発揮できる環境の実現に向けた全学的課題の解決に取組むために、「環境整備推進」「女性研究者育成支援」「教育推進」の3つの部門を置き、学内の兼務教員の協力の下、多岐にわたる活動を行っています。
しかしながら、本学が、誰一人取り残されない世界の実現に貢献することを使命とする中で、自らの組織の有り様を冷静に見つめた時、多様な構成員の包摂が不十分であることは否めません。世界の課題を解決するためには、課題解決の方法のみならず、課題設定における視点の多様性が不可欠です。研究活動が、学問の自由と各人の問題意識を土台とする以上、その基本的ニーズが男性と同水準ではまだ満たされていな女性、あるいはマジョリティと同水準では満たされていないマイノリティ属性をもつ人々がリアルに持ち合わせている問題意識は、「世界をより良くするために解くべきイシューは何か」という根本的な問いに対する極めて重要な示唆を与えるものとなります。
本学の現状を鑑みると、DEI推進において特に重要なのは、構成員の意識改革です。誰もが無意識のバイアス(無意識に刷り込まれた価値観の偏りや認知の歪み)を持っており、そのため少数派の心理的安全性を脅かしてしてしまうことや、長期的に見て正しい意思決定が妨げられる場面もあるでしょう。したがって、現状において、バイアスがかかったものの見方を前提とする各種制度や慣習、組織文化に真摯に向き合うことが必要です。
「学術を起点として世界の課題解決に貢献するためのDEI」のさらなる推進向けて、学内の様々な部署と連帯しながら、本学の就学・就労環境の現状がよってたつ「前提」を問い直し、抜本的な改革にむけて努力を重ねてまいります。
今後も一層のご指導とご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。
2023年4月1日
北海道大学 理事・副学長
ダイバーシティ・インクルージョン推進本部 本部長
山口 淳二