ダイバーシティ・インクルージョン(DEI)推進本部は、12月3日から9日までの「障害者週間」の期間に合わせ、特別講演会「耳が聞こえなくたって~難病の子供を持ち、大企業を辞めて起業するまで~」(令和6年12月4日(水)、クラーク会館 大集会室1)を開催しました。合計75名(対面45名、オンライン30名)の学生・教職員、全国各地からの高等教育機関関係者等が参加しました。
今回講師を務めていただいた牧野友香子氏は、先天性の重度難聴があり障がいをもつ当事者でもありますが、小中高校は特別支援学級ではなく友人と同じ通常学級で学び、その後大学に進学され、一般採用枠で企業に就職をされたご経歴をお持ちです。そして、難聴児を支援する会社を起業され、現在は拠点をアメリカに移しキャリアを積まれています。
講演では、小中高の学習環境とは異なる大学で生じる問題や、企業に就職し仕事をする中で気づいた課題などについて、ご自身の経験を交えながらお話をいただきました。
大学生活では、障がいによる困難な状況について、特に一般教養科目の授業では科目ごとに異なる教員にその都度説明が必要であったこと、必修科目でもある外国語の授業の難しさ、ノートテイクの支援が速やかに受けることができなかったことなどが挙げられました。また、牧野さんは読唇術でコミュニケーションをとられていますが、社会人になってからは、普段の生活の中で聞こえてくる物音や会話などから周囲の人が知らず知らずの内に取得している多くの情報を得られていないことに気づき、例えば上司の機嫌や同僚の好みを把握するといった他の人にとっては特に注力しなくてもできていることが難しいことを説明されました。
一方で、こうした困難と向き合う中で、周りの人たちに助けを求めることの重要性やどのように伝えたら理解を得やすいかといった工夫についても語られ、ご自身の特性に向き合いながら、どのようにキャリアアップしていくのか、自分のやりたいことや目標をいかに実現させていくのか、常に考え行動されていることが紹介されました。
現在の海外生活や、難病を抱えるお子さんの育児との両立、そして起業のお話なども交えながら、牧野さんのキャリア構築の過程やリーダーシップ、そして生活と仕事の両立について、障がい者、女性、母親といった様々な視点で語っていただきました。
参加者からは、
「ご本人の経験談は、障がいの有無にかかわらず、人生に役立つものだと思いました。 失敗を恐れず、毎日を過ごしたいと思えました。」
「(障がいの障壁を予め減らせるようにと、保護者や周囲の人が先回りをして配慮やサポートをしてしまうという点について)先回りせず本人に経験してもらってから、本人に選択してもらうというのも本当に大切なことで、気付かされることが多かったです。」
「努力では埋められない、聞こえる人が無意識に入手している情報について、自覚しないといけないことを学びました。」
「聞こえなくたって牧野さんのように前向きに生きられることがよくわかり、元気をいただけました。」
などの、たくさんの感想を頂きました。
障がいの有無に関わらず、挑戦を続けながら自分の人生やキャリアを切り拓くポジティブなマインドを持つためのヒントを沢山いただくとともに、障がいのある当事者目線から見えてくる大学におけるDEI推進の意味について、本学の教職員・学生一人ひとりが自分事として考える機会となりました。
【講師】牧野友香子 氏
・著書「耳がきこえなくたって 聴力0の世界で見つけた私らしい生き方」KADOKAWA (2024/7/2)
・YouTubeチャンネル「デフサポちゃんねる」 https://www.youtube.com/channel/UChitc-o2VfWz5cgT-rMRIjQ
・株式会社デフサポ https://nannchou.net/
・株式会社マスドライバー https://massdriver.net/