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キャリアとリプロダクティブ・ヘルス/ライツ両立支援コラム①

第1回 人生100年時代のWell-being
~キャリアとリプロダクティブ・ヘルス/ライツ 


キャリアとリプロダクティブ・ヘルス/ライツについて、
CAFEえびに集うメンバーと一緒に考えていきたいと思います。

えび先生 : CAFE EBIのマスター。
      産婦人科医からキャリアチェンジして念願の喫茶店を開業。
      “ワイフ”と呼ぶパートナーのかにさんやお客さんとの会話が楽しみ。
かにさん :CAFE EBIのキッチンリーダー。
      もともとは食とは全く関係ない分野の研究者だったが、
      美味しいごはんの提供をしたくてえびせんせいとキャリアチェンジ。
まっちゃん:CAFE EBIの常連客。仕事はラボで研究員。しょうくんがパートナー。
      最近、同級生のライフイベントの報告が多い。
      ライフ・キャリアプランを意識している。
しょうくん:CAFE EBIの常連客。仕事はラボで研究員。まっちゃんがパートナー。
      えびせんせいからリプロダクティブ・ヘルス/ライツという考え方を知り
      勉強中。

※登場人物は全て架空の人物です。

Take home message

  • 年代による体の変化を知って、キャリアとライフデザインを意識してみよう。
  • 身体に起こることは同じでも感じ方や症状は人それぞれ。
  • 例えば月経や月経随伴症状は個人差があり、同性でも認識が異なる。
  • まず自分の体のことを知ってすきになろう。
  • TOPIC

  • 年代による心身の変化1-性ホルモン分泌の変化とともにおきている身体の変化-
  • 年代による心身の変化2-身体の変化と向き合い、気をつけたいこと-
  • リプロダクティブ・ヘルス/ライツ 自分のキャリアは、自分の健康な未来とともに
  • まっちゃん、しょうくんいらっしゃい。友達の結婚式、どうだった?

    すごく素敵な結婚式だった。結婚とかまだ考えてないけど、今は仕事したいし、結婚とか出産は想像できないなぁ。

    まだ社会に出たばかりだし、しばらくはキャリアに邁進したい気持ちもあるかなぁ。
    えびさんとワイフさんは、どうやって結婚やライフプラン決めてきたんですか?二人とも喫茶店の前は確か研究者やってたって・・・?

    そうそう、ぼくは喫茶店開く前は産婦人科で診療も研究もやっていたよ。
    医者になることも、研究することも、喫茶店も、ワイフと結婚することもぜーんぶ夢だったんだ。自分たちの体やリプロダクティブ・ヘルスに関する知識はあったから、二人のキャリアを考えつつ家族を築いていくことに少なからず自信はあったけど、現実に直面するとまた違うものでその度に話し合いながら乗り越えていったものだよ。

    リプロダクティブ・ヘルスって何?

    これは、人間の生殖システムのすべての側面において、疾病や障害がないというばかりでなく、身体的、精神的、社会的に完全な良好な状態(well-being)にあることをさす言葉だよ。[1]リプロダクティブ・ヘルス/ライツ:1994年9月国際人口・開発会議(ICPD)/カイロ会議においてはじめて公式に提唱された概念。

    そうか。Well-beingな仕事やライフプランを考えていくときに、自分の体や健康状態の知識を持っていることがえびさんの中で自信だったんだ。

    そう。百聞は一見に如かず!の状況もあったけど、知識は持っていてよかったと思ったよ。

    例えばどんなこと?

    一番は、性別が異なるワイフの健康を一緒に考えることができたことかな。しょうくん、まっちゃんが例えば妊娠したとする。妊娠期間は何か月で、その間どんな風に体が変化するか知っているかい?そして、妊娠でまっちゃんの日常がどのくらい変わるのか想像できるかい?

    まず、妊娠期間は10か月だっけ?

    わたしもどう体が変化していくのか想像つかないし知識もあいまいだな。

    そうか。キャリアも人生設計もまだ続く2人へ、えびが知っておいてよかった情報をこれから伝授していこう

    年代による心身の変化1-性ホルモン分泌の変化とともにおきている身体の変化-

    ふたりとも経験しているように、ヒトの体って年齢を重ねるにつれて身長が伸び体重が増えて体格が変わったり、常に変化をしている。人それぞれだけども、思春期にはひげが生えてきたり、初経を迎えたりする。この変化には、男女それぞれ性ホルモンが関わっている。男性ホルモンと女性ホルモンの分泌が、年齢とともに変化する様子は見たことあるかな?

    図1 年齢に伴う性ホルモン分泌量ピークのグラフ
    公益社団法人 日本産婦人科学会監修”HUMAN+ 女と男のディクショナリー” P10,11より引用、改変

    男性ホルモンは思春期以降、分泌に比較的大きな変化はなく、高齢になると、少し減るぐらい。一方女性ホルモンは、20代から30代にかけて分泌のピークを迎え、40代ごろから、50代頃にかけて減少して、その後低い状態が続いていく。10代はじめで初経を迎えて、50歳ごろに閉経を迎えるというイベントはそのあらわれじゃよ。
    実は、中国最古の医書とされる“黄帝内経”の女性の加齢に伴う変化の記載中に“49歳 肉体が衰え始め、閉経を迎える”とあるんだ。現代人の平均寿命は、女性87.74歳、男性81.64歳と[2]2020年(令和2年)厚生労働省より報告された平均寿命昔よりも長く生きられるようになっているけれど、女性ホルモンが周期的に分泌され生殖可能な年数は延びていないってことなんだね。

    年代による心身の変化2-身体の変化と向き合い、気をつけたいこと-

    EBI:女性の年齢に伴うホルモンの分泌変化は、健康生活に関わる体のイベントに関係していることがいくつかあるんだよ。

    図2 女性ホルモン(エストロゲン)分泌量と全身的な変化 働く女性の健康応援サイト 女性特有の健康課題より引用、改変

    さっきのグラフで示していた女性ホルモンは、エストロゲンの分泌量変化だ。女性ホルモンに分類される“エストロゲン”と“プロゲステロン”のうち、“エストロゲン”は、妊娠成立に必要な卵胞を成長させたり、排卵に関わるホルモンなんだ。詳しくはまた性ホルモンについてお話するときに説明するよ
    やがて少しずつ閉経を迎えてエストロゲンが欠乏すると、やがて全身的な変化も出てくる。それが、骨粗しょう症や高脂血症だったりする。閉経前の女性はエストロゲンに護られているともいえるんだ。

    これだけ自分の体にわかりやすい変化があると、気持ちが追いついていかなさそう。

    ライフサイクルでの変化に追いついていけないこともあるだろうけど、もっと短い期間でホルモン変動しているイベントが女性にはあるよ。メンタルヘルスへの影響も研究されている。しょうくん、なんでしょうか!?

    ・・・?

    まっちゃん、月経周期の中で気分が変わることを経験していないかい?

    ・・・?

    正解は、月経?まっちゃんは月に1度すごく悲観的になったり、怒りっぽくなるんだ。

    正解!そしてしょうくん、よくまっちゃんを見ているね。まっちゃん自身は心当たりはない?

    言われてみると、気持ちが辛くなったり、しょうくんにもイライラしちゃったりする期間が定期的にあって、そのあと月経が来ている気がする。

    また月経については詳しくお話するけれども、ワイフも月経前は体調が変わっていたんだよ。最初は何がなんだかわからなかったんだけど、よくよくワイフと話すと、「月経前症候群(PMS)」[3]月経前症候群(Premenstrual … この注釈を読むにはクリックの状態だったんだ。ワイフの場合は、月経前に吐き気と腹痛がひどかったからそれで気持ちもつらかったみたい。産婦人科を受診して対応してもらったら、だいぶん楽に過ごすことができるようになったようだよ。

    じつは私、月経がずっと続くって時期が長かった時期があって。たまたま体調崩して、風邪かと思って内科に行ったら、月経周期聞かれて産婦人科を紹介してくれたの。そこで対応してもらったら、月経も周期的になり体調がよくなったんだ。

    月経異常や不順とひとことでいっても、人それぞれ色々な現象があって、自分に起きたことが他人も同じってことはない。その原因も様々だから、日々を快適に過ごすためにも、産婦人科のお医者さんは強力な味方になるんだ。

    私は差し迫った体調不良があったからすぐにお医者さん行ったけど、今健康アプリとか検査キットとかもあるから便利だよね。

    うん、本当にいろいろな情報にアクセスできるようになった。たとえばワイフは、月経周期なんかの生活イベントを記録できるアプリを活用していて、イライラした時に、あぁこれはきっと月経がもうすぐ来ることが原因だから深く考えないようにしよう、とか自分を客観的に見て過ごせているみたいだよ。最近は周期が変わってきているから、更年期[4] … この注釈を読むにはクリックのことも考え始めているみたい。それからいろいろな検査キットは簡便だけど、場合によっては結果の解釈や対応の点で,専門家つまり医師の意見が必要になることもあるだろうね。

    リプロダクティブ・ヘルス/ライツ 自分のキャリアは、自分の健康な未来とともに

    毎月の女性ホルモン変動と月経周期は、若い女性ならばみんなにあるけど、月経困難症や月経前症候群に悩むかどうかは人それぞれだね。本人の背景、社会的環境が絡んでいることもあるよ。各自が希望するキャリアプランやライフプランを実現するためには、健康な体をもつことは大切な条件のひとつだろう。リプロダクティブ・ヘルス/ライツは、もともと子供を産むか産まないなどを決める自由などなんだけど、自分がその健康と権利をどのように行使していくか、つまりライフプランにもつながっていくんだね。適切なプラン設定には、まず自分の体を知ることになるという話だね。

    あと十数年後の自分のことを想像すると、自分の希望や眼の前にあることの優先順位なんかを考えやすくなりそう。

    将来のパートナーのことは、他人事ではないからぼくも参考になったよ。(ポッ)

    しょうくんね、男性はホルモンの分泌に周期的な変動がないけど、将来子供がほしいなら、知ってもらいたい情報があるんだよ。それはまた今度^^

    (監修:北海道大学大学院 保健科学研究院 教授 蝦名 康彦)

    脚注

    脚注
    1 リプロダクティブ・ヘルス/ライツ:1994年9月国際人口・開発会議(ICPD)/カイロ会議においてはじめて公式に提唱された概念。
    2 2020年(令和2年)厚生労働省より報告された平均寿命
    3 月経前症候群(Premenstrual Syndrome:PMS):月経前3~10日の間続く身体的あるいは精神的症状で、月経発来とともに減退ないし消失するもの。腹痛、腰痛、乳房緊満感(乳房が張っているように感じること)、つかれやすい、眠気などの身体症状、いらいら、おこりっぽさ、意欲減退、不安感などの精神症状が見られる。
    4 更年期:女性が性成熟期の終りに達し、卵巣の活動性が次第に消失し、月経が永久に停止した状態を閉経という。本邦の閉経年齢の中央値は50.5歳である。 そして、閉経前の5年間と閉経後の5年間とを併せた10年間を「更年期」という。更年期にはさまざまな症状が現れるが、その中でも症状が重く日常生活に支障を来す状態を「更年期障害」という。